多くの企業が副業を許可しないわけ。
昨今、パラレルワーカーという言葉が認知されてきています。そんな中で、「副業したいけど、会社で禁止されている」という方は多いのではないでしょうか。今回は、会社が副業を禁止する「表向きの理由」、そして「本当の理由」について解説していきます。
・会社はなんで副業を禁止したがるの?
そもそも、会社はなぜ「副業」を禁止するのでしょうか?
副業を容認している企業は22.9%
まず、副業を認めている会社がどれくらいいるのか。調査では、全体(1147社)の22.9%にとどまっています。具体数でいうと、262社となりました。
内訳を見ていくと、「副業を推進している企業」が0.3%、「容認している企業」が22.6%。
そのほかの77.2%の企業は、副業を禁止しています!
社員規模別に見ると「10〜49人」が25.6%と最も高く、ついで「300人以上」が19.5%となっています。
業界別に見ると「建設業」が最も高く26.0%、次に「サービス業」が24.4%。最も低いのは、卸売業・小売業となりました。
ただし、副業・兼業を禁止している企業のうち、しっかりと規定で禁じているのは全体の61.9%。のこりの企業は、就業規則への記載なく副業を禁止していることになります。
・副業を禁止する理由(表向き)
副業を禁止している企業に理由を尋ねた項目もあります。本音かどうかはともかく、一応企業がどのように表明しているのか確認してみましょう。
- 社員の長時間労働・過重労働を助長する
- 情報漏洩のリスク
- 労働時間の管理・把握が困難なため
TOP3はこのようになっています。特に、1位の「社員の長時間労働・過重労働を助長する」に関しては55.7%と過半数。確かに、社員の健康は大事です。
過重労働で過労死…なんてことになっても、現在は一つの会社の労働時間でしか判断されませんから、救済されないわけです。
(参考 リクルートキャリア 兼業・副業に対する企業の意識調査)
副業したい人は4割以上!副業禁止の企業に魅力を感じない人は8割も!?
会社は社員に副業をしてほしくありません。
では一方で、副業したい人はどれだけいるのでしょうか?
株式会社マクロミルの調査によると、副業をしたいと考えている正社員の割合は44.1%。
さらに、社員が「副業を禁止する会社」に対して持つ印象を調べたところ、驚くことに83%が「まったく魅力がない」または「あまり魅力がない」と回答しています。
すなわち、副業の広がりをみせる昨今、副業禁止の良し悪しは別として、人事採用の点では企業にとってマイナスに働く可能性が高いと言えるでしょう。
(参考 株式会社マクロミル 「HoNote通信」より)
・「社畜」にしたいから?会社が副業を禁止する本当の理由は?
とはいえ、以上のランキングの結果が企業の本音なのでしょうか。企業が副業を禁止するのは、もう少し生々しい理由があるのではないでしょうか?
・雇用関係のある会社に尽くすべき
日本社会の代表的な思想、いわゆる「社畜精神」。雇う/雇われるという関係で生活を保障している以上は会社のほうが立場が高く、社員は100%の力をもって1つの会社に尽くすべきだという考えです。(なくなりつつありますが)年功序列の思想は根強く残っており、会社は社員を生涯守るもの、社員は会社に生涯尽くすものという精神で副業を禁止するわけです。
しかし、これを理由として副業を禁止している企業は、ちょっと将来性が怪しいのではないでしょうか。
現代は「一企業・終身雇用」というキャリアが一般的ではなくなりつつありますし、会社がどこまで自分を守ってくれるか不安になるのが当然の社会です。
そんな中、「守ってやるから副業をするな」という考えは納得されづらいでしょう。
・優秀な人材とスキルの流出を防ぎたい
正直、この理由で副業を禁止している企業がもっとも多いのではないかと思います。副業ができるというのは、能力の証明でもあります。そんな人材が副業に一生懸命になって本業がおろそかになっては困りますし、場合によっては引き抜きも考えられます。
雇用不足が叫ばれる中、優秀な人材を手放すわけにはいきませんから、リスクヘッジとして副業を禁止しているというわけですね。
企業が副業禁止にする理由を見てきましたが、そもそもどこからが副業なのか、理解が曖昧な方も多いのではないでしょうか?
会社で働く社員が何をもって「副業」とみなされてしまうのか、認識をすり合わせていきましょう。
・労務提供型と不労所得型
まず、どの程度が副業とみなされるのか?について、明確なラインがあるわけではありません。
ただ、一般的には、他社で勤務をするとか、事業主として事業を展開するといった「労務提供型」は副業に該当するとされています。
それに対して、株式投資や不動産投資のように、労働の対価以外で収入を得る「不労所得型」は、原則、副業に該当しません。
営利目的かどうか
そして副業とみなされる2つ目の条件は言うまでもなく、営利目的であることです。
つまり、ボランティアは副業に含まれませんし、趣味で発信していたブログで、少々の広告収入が発生した程度では副業になりません。
逆にいうと、初めから広告収入目的でブログ運営などをしていれば、それは副業ということになります。
・反復継続性があるかどうか
また、労務提供型、営利目的であっても、その活動が継続的でなければ副業には当たりません。たとえば、「知人が運営するカフェの人手が足りず、一日だけ手伝った」ことでヘルプ代をいただくのは問題ないでしょう。
まとめると、以下のようなものは原則的に副業とはなりません。
ボランティアや1回限りのアルバイト
趣味で書いているだけのブログ
不用品をネットショップで売る
ただし、所有する不動産の清掃や苦情処理といった「管理業務」を委託せず、自ら行っている。
不用品を他人から回収してネットショップで売り続けているなどの場合、もはや①労務提供型②営利目的③反復継続性の3つに該当するため、副業とみなされても仕方ないでしょう。
・基本的に副業はOK!だけど、副業による懲戒解雇が認められるケースもある
実は、「副業の全面的な禁止」は法律上許されないことになっています。ただし、ケースによっては就業規則としての副業禁止が有効になる場合があるのです。
・本業に影響がでるほど長時間の副業
まず、副業のしすぎで本業に支障をきたす場合です。
余暇利用のアルバイトの域を超えたという判断で、解雇の有効性が認められた判例があります。
このケースでは終業後に毎夜6時間の副業をしていたため、このような結果になりました。
反対に、そこまでの労働をしなければ、副業は法律上認められます。たとえば週末や夜間だけの塾講師や、日雇いで数回だけ引越し業務を行なうなど。
つまり、本業への影響がなければ良い、ということになります。
・同業他社(競合関係になる)
「本業に影響が出る」という観点では、長時間の副業だけでなく競合関係の副業も含まれます。働きながら会社を設立するなどし、本業の会社の取引先と取引を行った結果、背信的行為だとして解雇が認められたケースがあります。副業をするのであれば、同じ業界は避けたほうがいいでしょう。
・副業の内容が会社の信頼やブランドを損なう
反社会勢力と接点を持つことや、詐欺・詐欺まがいの商法で副業をしている場合は、ここに該当します。「あいつ、ここの社員だってよ」という噂が広がるなど、会社に悪影響が出るような副業は、解雇の理由として認められてしまいます。
政府は推進しているようですが、企業としては副業はなるべくしてほしくないものでしょう。また、副業は法律上認められていますが、それをサポートするような制度がないのも現実です。副業を考えている場合は自社の就業規則を確認し、覚悟を決めて行なう必要がありそうです。